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2011/02/17

バルト三国旅行記(3/9)|リーガ。空。


より大きな地図で バルト三国縦断 を表示
 5時半に目が覚める。シャワーを浴びて、ひげを剃る。旅行用のマンダムのシェービングフォームが空になった。今までありがとう。
 今日でエストニアをあとにして、バルト三国の真ん中、ラトヴィアの首都リーガへと向かう。
 8時半のリーガ行きバスに乗るために、7時15分ごろに宿を出る。さらば「The Dancing Eesti」。施設はイマイチだったけど、スタッフの兄ちゃんが親切で良い宿でした。
 外に出ると、猛烈に寒い。前日も朝の9時に出て寒いと感じたけれど、2時間早いとその比ではない。耳つき帽子とネックウォーマーで完全防備なのだが、わずかにさらした肌が痛み、ノースフェイスの手袋を貫いて手先を凍らせる。アスファルトを覆った雪も凍りつき、足元を滑らせる。冬場、早朝のタリンは危険極まりない。
 

 ショッピングセンター「Viru」の近くにある停留所で、バスターミナルへ行くトラムを待つ。この時間、キオスクはまだ開いていなかったので、昨日のうちにチケットを買っておいた自分を讃えたい。トラムの停留所にいた兄ちゃんにここで良いのか一応確認してみると、「2番か4番のトラムなら大丈夫」ということを聞いて一安心。しかし、次のトラムが来るまであまりかかるようだと凍死するなぁなんて思ったところで、タイミングよく2番のトラムが到着。7時15分に宿を出た自分を讃えたい。
 トラムに乗り、3つ目の「Autobussijaam」で下車する。電光掲示板があるのがありがたい。


 トラムを降りてあたりを見回すと、「TALLINNA BUSSIJAAM」の青いサインが見えたので、そちらに向けて歩く。「bussijaam」あたりから感じていたけれど、LとかNとかSとかAを浪費し過ぎでは無いだろうか。


 国際バス会社Ecolinesの窓口へ行き、チケットを購入。チケットといっても、普通にプリントアウトされたA4用紙であったけれど。

 朝食としてバスターミナルのキヨスクでハンバーガーを買う。Mamma HAMBURGER(1.6ユーロ)。こちらのママはハンバーガーを作るのか。香草の風味がして悪くない。

 待合室の電光掲示板には、到着したバスの出発時刻・行先・プラットホームの番号が表示されている。現れては消えるそれらの表示を見ていると、まだ朝早いというのに10分から15分おきに次々とバスが到着しているようだ。

 ところで、肝心のリーガ行きのバスが出発5分前になっても表示されない。念のためプラットホームに出て確認してみると。黄色い車体のバスが到着しているのを発見。そして今まさにドアを閉めようとしていた。
 慌てて走り、ドアに近づいて開けてもらう。間一髪。やはり旅行中に「待ち」の姿勢でいることは危険だ。
 やがてバスが走り出す。アナウンスによると、バスは途中パルヌで停車し、終着のリーガまでは4時間半ほどかかるらしい。バスの車内は清潔で、有線放送のような音楽が流れている。バスが有線だったら進めないとは思うけれど。また、途中で気付いたのだけれど、トイレもついていた。
 車内の乗客は10人ほど。座席は指定であったけれど、空いていたので指定されていたおばちゃんの隣席を離れ、窓側へ移る。

 バスが発車してしばらくすると、街中から郊外へと風景が変わる。
 外をぼんやりと眺めていると、あることに気付いた。空がものすごく赤い。建物が少なくなり、木々の切れ間から地平線が見えると、ある一点を中心に空が赤く染まっている。
 それは均一のグラデーションではなく、雲の濃淡に合わせて色づきもまた濃淡がある。その空の手前にある葉を落とした木々が筆のように黒い細かな筋を空に刻みつけている。まさに大自然。
 この風景を前にしたら人智を超えた何かの存在を想起するのも当然というものだろう。夢中で写真を撮っている合間に、ふとあたりを見回したけれど、誰も興味を示していない。エストニアは毎日こんな感じなのだろうか。これが日常なら、エストニアの人は誰も旅に出ようとしないだろう。


 空が明るくなり、その色が薄まってきたのでカメラをしまい、外を眺めていたら、いつのまにか寝ていた。
 目を覚まして腕時計を見ると、時間は11時ごろだった。ふとバス前方の景色を見ると、ゲートのようなものを発見。
 これはひょっとしたらエストニアとラトヴィアの国境かもしれないと思う。しかし、なんのイベントも発生することなく通過したので真偽は不明。この旅行は三国にまたがって行われるはずなのに、国境越えのイベントに乏しい気がする。あると嫌だけど、ないと寂しい入国審査。

 ラトヴィアの国境とおぼしきものを超えてすぐのことろに、大きな風力発電の風車があった。ということでここはきっとエコの国に違いない。エコの国ラトヴィアに入国。
 12時40分、リーガのバスターミナルに到着。


 南下はしたものの、寒さについてはダウガヴァ川の凍りっぷりから推して知るべし。


 バスターミナルにあるATMで30Ls引き出す。ようやく現地通貨「Lats(ラッツ)」を入手。貨幣価値がよくわからないのだけど、『歩き方』によると1Ls=176円くらいらしい。計算がめんどくさいので150円くらいじゃないかというイメージで臨むことにする。
 まずは日本で調べておいた宿「The Naughty Squirrel」を目指す。相変わらず予約はしていない。タリンのときとは違い、バスターミナルから5分ほどですんなりと発見。


 階段を登って2階のフロントへ。受付のお姉さんが早口で宿の説明をしてくれる。言っていることの2割くらいしかわからなかったけれど、適当に「アハーン」とか言っていたら、6つベッドがあるドミトリーに泊まることになった。


 Naughty Squirrelはとってもハイセキュリティだ。建物の入り口、宿の入り口、部屋の入り口にそれぞれカードキー式のカギがついている。カードキーはきちんと部屋ごとに設定がされており、別の部屋には当然入れなくなっている。同部屋に泥棒が泊まっていたらどうしようもないのだけど、とても安心して滞在することができた。トイレ&シャワーも清潔で数も十分あり、Hostel Worldでの高評価も納得の宿である。

 部屋にバックパックを置いて、街歩きをスタート。リーガの旧市街は、「リーガ歴史地区」として世界遺産に登録されている。例によって大きさのイメージが分かりやすいように、柏駅周辺との比較をご用意したので参考にしていただければと思う。(参照



 さて、まず新しい街に来たら高いところに登るのが旅人のたしなみなので、「聖ペテロ教会」へ。ここでは塔のてっぺんに登ることができる。入場料は3Ls。


 歴史を感じる外観とは裏腹に、塔のてっぺんへはまさかのエレベーターで昇る。大阪城並のギャップにイチコロである。


 ボタンを押してエレベーターがやってくる。ドアが開くと、エレベーターにはおっさんと椅子とヒーターがワンセット。僕はボタンを押してエレベーターが来たように思っていたけれど、どうやら中のエレベーターオヤジが操作している模様。そう言えばボタンの横には「エレベーターは10分おきに運転しています」という張り紙があった。それにしても、「教会でエレベーターを操作する仕事」なんてものが存在しているとは。世の中は広い。
 おっさんと沈黙と過ごした数十秒ののち頂上へ。
 塔から見下ろす街の風景が……云々の前にともかく寒い。そしておっさんとエレベーターは下へ。このままおっさんが迎えに来なかったら凍死は免れないだろう。この旅行中、凍死の機会には事欠かずに済みそうだ。
 それはさておき、せっかく登ったのだから、塔から見下ろす街の風景を写真におさめる。






 ほどなくしておっさんがちゃんと迎えに来てくれたので、無事地上に降りる。こうしておっさんは日々マッチポンプ的な人命救助を行っているのかと思うと、頭が下がる思いだ。
 教会内の写真も少し撮る。タリンの教会はどれも撮影禁止だったのでありがたい。神に感謝。


 教会を出て、「サムライス」といううさん臭い日本料理屋の横を通り過ぎ、市庁舎前広場へ。
 市庁舎前広場には、当然市庁舎があるのだけれど、その向かい側に「ブラックヘッドの会館」という妙な外観の建物がある。『歩き方』によると「ブラックヘッド」とは未婚の貿易商人による友愛会であったらしい。なるほど中に入ってみると、見事な調度品やきらびやかなダンスホールなどに、暇と金を持て余している感じがよく出ていた。建物自体は2000年に再建されたものだそうだ。









 ブラックヘッドを出てしばらく歩き、ドゥアマ広場へ。ここにはバルト三国でも最大規模の大きさがある教会「リーガ大聖堂」があるのだが、その前にお腹が減ってきたので食事にする。
 探すのが面倒だったので、前を歩いていた人が入った「Alus Seta」という店に適当に入ってみる。


 すると、なんということでしょう。この店はビュッフェスタイルだったのです。
 僕はビュッフェスタイルのレストランが苦手だ。なぜなら、僕のグラスハートは後ろに並ぶ人々からのプレッシャーに耐えられず、わけのわからない組み合わせになることがよくあるからだ。
 結果、今回もどう考えても宗教上の制約があるとしか思えないような偏った組み合わせになってしまった。

 敗北にまみれた料理ではあったけれど、腹は満たされたので、いざリーガ大聖堂へ。


 由緒正しき(?)教会らしく入口で帽子を脱ぐよう指示するサインがあったけれど、誰も脱いでいなかった。
 まずは中庭をめぐる回廊へ。ここでは再建前の大聖堂で利用されていた建材や調度品が放置……展示されている。





 外は寒いので、回廊もそこそこに再び中へ。それにしても、ステンドグラスの写真はいつも綺麗に写らない。




 歩き疲れたのでいったん宿に戻る。
 部屋に入ると、僕がキープしていた二段ベッドの下の段に、誰かの荷物が置いてある。どうやらベッドの上に地図を一枚しか置いていなかったので、空いていると思ったらしい。大聖堂帰りの敬虔な気持ちでなければ持ち主をボコボコにしてやる所であったけれど、自分のアピール不足ということで、おとなしく上のベッドに荷物を置く。


 気を取りなおして、宿の近くにあるショッピングセンター「Galerija Centrs」へ。旧市街のなかで唐突に現れる近代建築だ。


 やはりここでも「THE BODY SHOP」と「LOCCITANE」を発見。あと「G-STAR」にも遭遇。海外でよく見るダントツにカッコ悪いブランドの筆頭だけれども(個人の感想です)、海外では一体どういう位置づけなのだろうか。
 テナントのスポーツショップ「SPORTLAND」でラトヴィア代表のユニフォームを発見。しかしLサイズが二枚あるだけである。その隣にはアイスホッケー代表のものと思しきユニフォームが大量に在庫されていた。季節柄かもしれないが、バルト三国ではサッカーはあまり人気がないようだ。店員さんに在庫を聞いてみたけれど、二枚きりのようなので、当面購入を見送る。ほかの店で出会えるかもしれない。
 ショッピングセンターを出ると、いつの間にか外は雨が降っていた。雪ではなくて雨だ。傘はない。雪は払えば落ちるけれど、雨は染み入るので辛いところ。それに降りしきる雨が地面の雪を溶かして、足元はグッチャグチャである。この水分が明日には氷になっているのかと思うと生きているのが辛くなってきたので、宿に帰って寝る。

 起きてもなお雨は降り続く。雨が降り、腹は減る。というわけで、夕飯を食る。今宵の夕飯はレストラン「Petergailis」へ。
 まずはビール300ml(1.5Ls)。


 日本にいるときは一人でお酒をを飲むことはありえないのだけれど、こちらでは夕食時は必ずビールだ。下手な飲み物を頼むよりも安いので、ついつい頼んでしまう。あとは、雨に降られた日は飲まなきゃやってられない。

 次いでラトヴィア風サラダ(2.6Ls)。

 マヨネーズのようなソースで、何かの肉とキュウリと豆と香草で和えてある。食感が様々で美味しい。

 メインはラトヴィア風ポークチョップ(5.4Ls)。


 骨付きの豚肉にチーズと香草が載せて焼いてある。つけ合わせにこれまた香草入りのマッシュポテト。チーズが濃厚で美味しい。

 夕飯後はまっすぐ宿へ。
 二日分持ってきていた着替えのストックが尽きたので、洗濯をして部屋に干す。
 ドミトリーの二段ベッドにはハンガーをかけるフックが二つついている。きっと上下それぞれで一個ずつなのだろうけれど、使っている様子がないので、その二つを占有して洗濯ひもを渡す。ドミトリーの狭いスペースは常に奪い合いなのだ。
 上のベッドに登って寝る時間は23時くらい。部屋の外でイタリア人がずっと歌っていた。
 明日もリーガを散策するつもりだ。