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2011/02/21

バルト三国旅行記(4/9)|リーガ。トゥクムス。空振り。


より大きな地図で バルト三国縦断 を表示
 5時半くらいに目が覚める。旅行中はいつも早起きだ。昨晩干した洗濯物が乾いているか心配だったけれど、部屋の乾燥が尋常でなかったおかげでちゃんと乾いていた。
 下ベッドの住人は結局帰ってきた様子がない。シャワーを浴びるために部屋の外に出ると、ネットブックの手前で行き倒れるようにして寝ている半裸の男がいる。あれだったらどうしよう。
 シャワーを浴びて、ひげを剃る。再び洗濯をして、部屋に干す。共有スペースで日記を書いて、旅を反芻しながら時間が過ぎるのを待つ。

 9時過ぎに宿を出て、バスターミナル近くにある中央市場に行ってみる。海外旅行中に行く市場のワクワク感は尋常ではない。

 今日も凍りつく街。


 中央市場は体育館を3つか4つつなぎ合わせたような建物だ。建物はそれぞれ肉ゾーン、魚ゾーン、乳製品ゾーンなどにわかれて店が立ち並んでいる。









 建物の片隅にBISTROと書いてあるただのサンドイッチ屋があったので、そこでサンドイッチ(0.65Ls)を買って食べる。中には輪切りのソーセージとチーズ&レタス。


 中央市場を出てからバスターミナルに寄り、時刻表を見ながら翌日からの大まかな予定をたてる。
 時刻表を眺めていると、「TUKUMS」という文字を発見。『歩き方』によると、トゥクムスの街は
リーガから最も近く、アクセスもしやすい地方の町。旧市街はきれいに整備され、インフォメーションや博物館、気軽なカフェなどもあり、ちょっと趣向を変えてリーガから日帰りで訪れるのにもぴったりの町といえる。
そこまで言うならば行ってみよう。
 トゥクムスへのアクセスは、バスと列車それぞれがあり、費用も時間もほぼ同じである。とすれば、列車を選択して『世界の車窓から』ごっこを満喫するのが日本人としてのたしなみというものだろう。
 さっそくバスターミナルからすぐのリーガ駅へ歩く。リーガ駅はショッピングセンターが併設されていてやたらとデカい。


 トゥクムス行きの列車は30分ほど後の11時26分。ありがたいことにトゥクムスは終着駅であるらしい。これで列車が駅に停まるたびに「ここじゃないか」とドキドキする呪縛からは解き放たれる。


 さっそく窓口でチケットを購入する。お金を払うとまずレシートを渡された。そのままチケットの発券を待っていると、窓口のお姉さんが「なんでまだいるの?」的な目で見てきた。
 どうやらレシートだと思った紙がチケットであるらしい。片道の料金は1.31Ls。レシートのようなチケットを見ると、本来は1.75Lsであるはずが25%引きになっているようだ。なぜかはよくわからないけれど、きっと愛だろう。LOVE。
 3番ホームへ。改札はなく、列車内で検札があるようだ。ほどなくして派手目な配色の列車がやってきた。カラフルな色味と、いかつい構造がミスマッチ。車内は予想外に綺麗で、電光掲示板つきだ。






 ほどなくして列車が動きだし、「車窓からごっこ」を始めようとしたところで思わぬ問題発生。
 「もや」で車窓から何も見えない。『世界の車窓から』をするつもりが、『モヤモヤさまぁーず』に。

 トゥクムスには12時40分ごろに到着。赤レンガの趣ある駅舎だ。


 さて、着いたは良いものの、情報が何もない。『歩き方』にも10行ほどの解説文と小さな写真があるだけで、地図は載っていないのだ。仕方がないので、人が多く進んでいる方向に歩いてみる。
 駅から街中へ続く坂道を登り切ったところで、立看板を発見。「Information」に通じる矢印をたどって進み、なんとかツーリストインフォメーションにたどり着いた。
 中に入って、とりあえず受付のお姉さんから地図をもらう。
 「すみません。地図をもらえますか?」
 「はい、これよ。でも、今日は月曜日だから、全部閉まってるわよ。」
 「Oh...」
 日本人なのに思わず「Oh」とか言ってしまうくらい衝撃の事実。とりあえず後世の人々にはこう伝えたい。「月曜のトゥクムスには来てはいけない」と。
 せめて外観だけでも写真におさめるべく、地図を見ながら教会をめぐる。





 途中、ハードボイルドな野良犬に出会う。「ジョー」と名付けよう。



 リーガに帰る電車は14時56分と聞いていたので、それまで昼食にする。近くのカフェへ。
 注文したのは、前日の夕食でも食べたラトヴィア風サラダ。二回食べて気付いたけれど、僕はこれがとても好きだ。


 そして何かの肉のミートボールのスープ。コンソメ味。


 メインは何かの魚のフライ。これが超絶に旨い。魚は甘くて、ホワイトソースとよく合う。つけ合わせのじゃがいもは、ゆでた後に揚げ焼きにしてあって表面がサクサクで中はホクホクだ。


 (今気づいたけれど、じゃがいもを手前にして写真を撮っている……。大丈夫だろうか、この時の自分。)
 店の外観写真を撮り忘れたので名前も覚えていないけれど、トゥクムスにお越しの際はぜひおすすめしたい。

 14時半ごろ、トゥクムスの駅へ。窓口で帰りのチケットを買うべく、ババァとの死闘が始まる。
 「リーガへ。(To Riga.)」
 「リーガへ2枚とな?(Two Riga?)」
 「いや、一枚。」
 すると、値段も言わずに僕らの間に横たわる小さなトレイを指で叩くババァ。
 とりあえず1Ls置いて様子を見るが、ババァが物足りない様子なので、0.5Ls追加してみる。行きはこの金額で足りたので大丈夫だと思い、しばらく様子を見る。
 しかしババァは物欲しそうにこちらを見ている。挙句もう一度トレイを叩きだしたので、もう0.5Ls与えてみると、ようやく満足したらしく、チケットと0.25Lsの釣りをよこしてきた。
 こうして何とか妖怪トレイ叩きばばぁを撃退し、帰りのチケットを手に入れることができた。
 ホームにあった時計は4時間20分ほど遅れていたけれど、列車はきちんと定刻の14時56分に到着。始発駅だからかもしれないが、列車の運行は正確であるようだ。


 このとき、14時40分。



 リーガへは再び1時間強の道のりだ。途中駅の駅舎を撮りつつ帰る。それぞれの駅舎はよく言えば個性的、悪く言えば統一感が全くない。



 ところで、昨夜の雨により道はグッチャグチャで、何かとボロボロの僕のスニーカーには水が染みてきて、結構辛いものがある。ここ数年ずっと一緒に旅してきたこのスニーカーともこの旅でもうお別れだろう。


 16時過ぎにリーガへと戻ってきた。結果的に何をしにトゥクムスに行ったのかよくわからなかったけれど。まぁ良しとしよう。
 リーガ駅併設のショッピングセンターでお買い物。ついにラトヴィア代表のユニフォーム、Mサイズを発見したので購入(44.99Ls)。ついでに新しいスニーカーも探したけれど、あまり安くなかったので断念。彼らには最後まで頑張ってもらおうと思う。
 1時間ほどでショッピングセンターを出ると、あたりはすっかり暗くなっていた。

 旧市街へ戻り、その足で国立オペラ座へ向かう。実は前日にもオペラ座へ行き、公演スケジュールを確認していたのだけれど、明日まで公演がなかったのでチケットの購入を見送っていた。しかし、旅のペースを少し落としてゆっくりしたいと思い、リーガで観劇してみることに。


 オペラ座では、オペラとバレエの公演が半々ぐらいの割合でやっているのだけれど、翌日はバレエの公演で、演目は『TRIS MUSKETIERI』だ。
 よくわからないけれど、とりあえず何かが三つ出てくると思われる。
 窓口へ行き、4Lsの席を選んで購入した。これまでバレエを生で観たことがないのでとても楽しみである。ドレスコードの面で不安があるけれど、なるようになるだろう。
 今夜は雨も降っていないので、リーガの夜を撮り歩く。ただ、地面が濡れていいるので、カメラを固定する場所を確保するのが難しい。






 お腹が空いたので、夕食を食べる店を探す。せっかくなので新しい店に挑戦。旧市街をウロウロして、「1739」というレストランを発見する。
 大概の店には入口にメニューが置いてあるのだが、この店にはそれがない。しかし、ランチの値段が貼ってあり、それは3.5Lsと高くないのでまぁ大丈夫だろうと思い、一か八か入ってみる。

 「一か八か」といった場合、一と八のどっちが良いのか知らないけれど、どうやら僕は賭けに負けたようだ。
 高い。別に目玉が飛び出るようなことはなかったけれど、相場に比べて高かった。やるせない気持ちになったので、大きめのビールとよくわからないメイン料理を一品だけ頼んでみた。


 そしてやってきたメイン料理。


 米にホワイトソースがかかっている。チーズのないドリアのようなものだ。ちなみにつけ合わせのパンもある。これは、炭水化物の宝石箱やぁ。
 で、その上にエビが乗っている。ちなみに僕はエビが嫌いである。よほど残したかったけれど、日本代表として残すわけにはいかないので全部食べた。一気に食べて、20分くらいで店を出た。今日はもう寝よう。

 宿に戻り、歯を磨いて洗濯をする。洗濯物を干すために、いったん下のベッドに洗濯物を置いたら、予想外の水分でベッドが濡れてしまった。下ベッドの住民、ごめん。
 でもどうせ今日も帰ってこないだろうから、あまり気にせず干し終える。
 上のベッドに移り、日記を書いていると、なんと下ベッドの住人が帰ってきた。二人連れの若い欧米人である。
 さて、どうしたものか。ベッドを濡らした物的証拠はないけれど、この部屋で洗濯物を干しているのは僕だけなので、状況証拠は圧倒的に不利である。しかも上のベッドにいる。とりあえず寝たふりをして様子をうかがう。

 どうやら二人は酔っぱらっているようだが、流石にベッドが濡れていることには気づいたようだ。
 「Hey! 俺のベッドに水がこぼれているよ!」
 「ファンタスティッック!」
 もう一人の返しがよくわからないけれど、酔っ払いなんてそんなものだろう。
 思えば、下の彼は勘違いで下のベッドを奪った格好になってしまっただけなのに、フックを使われて、上から洗濯物を垂らされて、挙句にベッドを濡らされるなんて、踏んだり蹴ったりである。彼には本当に申し訳ないことをした。
 僕のせいで彼の中で極東人のイメージが下がらないことを心から祈っているうちに、気付いたら寝ていた。