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2011/04/23

バルト三国旅行記(7/9)|トゥラカイ。


より大きな地図で バルト三国縦断 を表示

 ヴィリニュス最初の朝、5時過ぎに目が覚めた。普段このくらいの時間に起きても誰も活動していないのだけれど、今日は同部屋の何人かが起きだしていた。ヴィリニュスのバックパッカーの朝は早いようだ。
 シャワーを浴びて、ヒゲを剃る。Jimmy Jumps Houseのシャワールームは広さが8畳くらいあり、部屋の広さとそんなに変わらないという謎の構造をしている。シンクで洗濯をして、ベッドにセットした洗濯ひもに干す。
 たまには宿で朝食をとってみようと思い、昨晩も訪れたスーパー「Rimi」へ行き、やたらでかいパンとチーズと牛乳を買う。宿に戻って、キッチンでパンとチーズをかじっていると、何だかとても「バックパッカー」という雰囲気がして良い朝食だ。牛乳だと思って買った飲み物は、飲むヨーグルトだったけれど。

 9時半に宿を出て、バスターミナルへ行く。今日はヴィリニュス近郊の街「トゥラカイ」を目指す。前日、バスターミナルから宿に来るときは20分ほどかかったけれど、今回は10分ほどで到着することができた。もはやヴィリニュスは自分の庭みたいなものだ。


 窓口でトゥラカイまでのチケットを購入(6Lt)。 タイミングが悪く、次のバスまで1時間ほどあり、何をするでもなくバスターミナルで時間を潰す。時刻表を見ると、プラハやザグレブなどの文字があり、ここからは各ヨーロッパの都市へのバスも出ているようだ。



 定刻になり、やって来た黄色いバスに乗り込む。念のためドライバーにトゥラカイへ行くか聞き、確認がてら「着いたら教えてくれ」というアピールをしておく。こういった場合、人種が異なると分かりやすくて便利だなぁと思う。トゥラカイのバスターミナルには30分ほどで到着した。


 ここトゥラカイを訪れた目的は、トゥラカイにある城、その名もトゥラカイ城にある。トゥラカイは今でこそ首都の座をヴィリニュスに譲ってはいるけれど、その風光明媚な城を有する観光地となっている。
 バスターミナルからは城までは1.5kmほどの道のりだ。ゆっくりと歩いて城を目指す道の左手には湖を望むことができ、その凍りついた湖上で釣りをする人たちの姿も見える。






 30分ほど歩いて、トゥラカイ城に到着。トゥラカイ城は、ルコス湖の上に浮かぶ、湖上の城である。まさか「橋を渡って湖上の城へ向かう」という体験はドラゴンクエスト以外の世界でできるとは思っていなかった。本当に世界は広い。





 父親がオルテガとか言われたらどうしようなどと考えながら、入場料12Ltを払って中へ。まずは城の中庭に出る。オレンジ色のレンガに囲まれた空間がとても気持ちが良い。真ん中には断頭台のようなものが見えるけれどきっと気のせいだろう。

 階段を登って建物へと向かうと、入り口には格子状の門と跳ね橋を完備していて、ドラクエの世界を忠実に再現している。


 建物の中は城の歴史をはじめ、地中から掘り出されたコインや、動物の剥製や、暇そうなおばちゃんなどが展示されている。タッチパネルで操作できる端末も置いてあり、それを見ると苦難に満ちた城の歴史をごく軽いタッチで楽しむこともできた。途中で城が炎上する様子と、そこをうろつく人の姿がとてもシュールだ。







 1時間ほどを城の中で過ごし、そこを後にする。

 時刻は13時を過ぎ、そろそろ昼食の時間だ。できればトゥラカイの名物料理を食べたいところである。
 ここトゥラカイには、かつて傭兵としてやってきた「カライメ」と呼ばれる、トルコ語系の人々が暮らしており、独特の生活を営んでいるという。そう言えば城へ向かう途中にUNOの色をした家があったけれど、それがカライメの人たちが住む家であるようだ。

 そんな彼らによりもたらされた郷土料理に「キビナイ」というものがあるという。キビナイを出す店は、近くに沢山あるそうなので、帰りの道すがら店を探してみると、「KIBYNLER」という店を発見した。この店名でキビナイがない可能性は相当に低いであろうと予想し、中へ。席につき、メニューを見るとやはりキビナイを発見。僕の洞察力というか推理もなかなか捨てたものではない。


 というわけで、チキンのキビナイ(4.9Lt)とメニューに「キビナイと相性抜群!」と書いてあった謎のスープ(4Lt)にコーヒー(3Lt)を注文する。
 ほどなくしてキビナイが登場した。ファーストフードな見た目である。揚げた生地のなかにひき肉が入っていて、味は「餃子ドッグ」にとても近く、「揚げ餃子ドッグ」という風味である。


 腹も満たされたので、バスターミナルへと戻り、ヴィリニュスに帰るバスに乗る。行きよりも小さいバンのような車で、社内で運転手に料金を支払う。運賃は6.8Ltで、なぜか往復で料金が違う。行きと比べると停車回数が多く、乗合タクシーっぽい動きをしていたので、そのせいかもしれない。
 15時ごろヴィリニュスに帰着し、いったん宿へ。時刻は15時半。18時半からバレエの公演があるのだが、それまでの時間が中途半端にあいてしまった。それまでの日記を書いていたけれど、しばらく書いていたら現在に追いついてしまった。懐かしの「未来日記」に突入してしまいそうなので、共同スペースでインターネットをしてしばし時間を潰す。けれど、海外旅行先でネットによって潰される時間の気持ちを思うと悲しくなった。

 17時半に宿を出て、公演の行われる国立オペラ・バレエ劇場へと向かう。途中、ショッピングモールに寄り道しながら、18時ちょうどに会場へと到着した。劇場の建物自体は新しいため、リーガの劇場に比べ外観の荘厳さには欠けるけれど、中はきらびやかな社交場の雰囲気で満ちていた。






 ほどなくして客席が開場したので中へ。内装はいかにも新しい劇場といった雰囲気。客席の傾斜が足りずに前方の席にいる人の頭が舞台にかかってしまうのが残念。もしくは特別座高の高い人が前に座っているだけなのかもしれない。

 18時半を少しまわったころで公演開始。演目は『The Sleeping Beauty』。『眠れる森の美女』については、そのストーリーをずっと思い返してみたけれど、「美女が寝る」以外のストーリーが思い出せない。そもそも知らなかったような気もしてきた。
 それはさておき、バレエの感想であるけれど、「バレエ通」を自認する僕に言わせれば、公演の前半は退屈そのものであった。「踊らずに話を進める小芝居」と、「話を進めない発表会のような踊り」のサンドイッチで、舞台上の美女より先に眠りにつけそうな勢いであった。
 とは言え、僕が寝ても起こしてくれる王子が来る可能性は低いので、頑張って耐えていると、休憩を挟んでからの後半はぐっと良くなった。特にプリンシパルと思しき王子のソロはジャンプに高さがあり、能力を十全に活かすことの美しさを感じさせてくれた。

 劇場を出ると、時刻は21時。劇場近くのスーパー「Maxima」で翌日の朝食に牛乳(今度こそ)とチーズを買う。そして夕飯は昨日と同じ「Forto Dvaras」で食べる。
 約一週間のバルト生活により、食事について学んだことは以下の二つだ。「豚肉にハズレなし」と「マッシュルームがうまい」。この法則に従って食事をオーダーする。
 まずはビール。昨日と同じビールだ。


 そしてスープは野菜とマッシュルームのスープ。チャウダーっぽい味で、じゃがいもが入っている。


 久々に生魚が食べたかったので、ヘリングというニシン系の魚をオーダー。付け合わせはマッシュルームとここでもじゃがいも。魚が甘くておいしい。


 メインは豚肉のフライ。ポークカツというかトンカツというか。付け合わせにポテトサラダ。とことんじゃがいもを付け合わせて来るのだが、じゃがいもが余っているのだろうか


 23時ごろ店を出て宿へ。食べ過ぎて苦しい。歯を磨いて就寝する。