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2011/04/24

バルト三国旅行記(8/9)|ヴィリニュス。教会とショッピングモール。

2011年1月21日(金)ヴィリニュス
 6時に起床し、シャワーを浴びて、ヒゲを剃る。明日ここヴィリニュスを去るので、もう洗濯の必要はないのが楽だけれど少し寂しい。
 昨日に引き続き、キッチンで朝食を。昨日の残りのパンと、バレエ帰りに買ったチーズと牛乳をいただく。久々の牛乳は甘くて美味しい。


 共同スペースにあるパソコンで、帰りのフライトのチェックインをする。手続きしたあとに、Eチケットをプリントアウトする必要があるのだが、ここにはプリンターがない。フロントにあるパソコンにはプリンターが繋がっていたので聞いてみたけれど、あいにく故障中とのこと。後でどこかのネットカフェでプリントアウトしなければならない。

 共同スペースのソファに座り、で昨日の日記を書いていると、宿に到着したばかりといった様子のグループが入ってきた。男3人に女1人。一組の男女はカップルらしく、しばしばいちゃついている。旅行中このような海外ドラマで目にする人間関係をたまに見るのだが、僕の感覚では少し理解しがたいものがある。残りの男子一組がカップルであるならば不思議はないけれど。

 9時前に宿を出て、聖ペテロ・パウロ教会を目指す。正直に言うと、教会については食傷気味であるのだけれど、この教会は内壁の彫刻がとりわけ見事で、そんじょそこらの教会とはひと味違うようなので、期待を込めて足を延ばすことにした。
グッドデザイン。


 聖ペテロ・パウロ教会は旧市街からは少し離れたところにある。ゲディミナス塔のある丘を回りこんで、大きな道路沿いに、15分ほど歩いて到着した。サイズは大きめだけれど、外観はごく普通の教会だ。


 中へ入ってみる。すると、ありとあらゆる壁面に無数の彫刻が彫り込まれている。白単色でありながらとても装飾的であるあたりが、何かに似ているなぁと思ってしばらく考えてみたら、ショートケーキだと気がついた。




 教会を出て、ノリス川をまたいだ北側の新市街を目指す。新市街で、おみやげと、リトアニア代表のユニフォームを探し求めるつもりである。



 15分ほど歩くと、この旅行中初めて高層ビルを発見。ビル群と呼ぶには寂しい数であるけれど、「人は旧市街のみで生きるにあらず」という当たり前のことを思い出させてくれた。そんな高層ビルのふもとに、ショッピングセンター「europa」がある。中に入ってみると、ここでも「THE BODY SHOP」と「LOCCITANE」を発見。バルト三国におけるこの2店の出現率は、日本のショッピングセンターにおけるRight-onとABCマートの出現率とほぼ同じになるというのが、僕の研究成果である。


 1階にはカフェや書店、2階にはアパレルショップなどがテナントとして入っている。そして3階にバルト三国ですっかりおなじみのSPORTLANDを発見するも、ここにも代表のユニフォームはなし。スキーやスノーボードなど、ウィンタースポーツのグッズばかりであった。
 europaを出て、地下道を通り道路の反対側に渡る。こちら側にはショッピングセンター「CUP」がある。CUPは4階のフロアにまるごとスポーツ用品店が入っていたので期待したのだけれど、やはりユニフォームはなし。リトアニア代表の人気が心配である。


 歩き通しで疲れたので、ジェラートで糖分を補給する。店員のお姉さんと今ひとつコミュニケーションが取れず、値段がわからなかったので、手のひらにコインを広げて適当に取ってもらい、お会計をした。


 CUPから外に出ると、何だか外が明るい。何と言うことでしょう。ヴィリニュスに着いてからずっと(むしろ旅行中ずっと)、雲に覆われていた空から、薄日が射している。久々に見る太陽に思わずカメラを取り出す。まさか人生で「太陽が見えたから写真を撮る」日がやってくるとは思わなかった。

 ユニフォームはあきらめて、ヴィリニュスの街中を散策する。




 散策の間に、ツーリストインフォメーションの前を通りがかったので、この近くでプリンターの使える場所がないか聞いてみる。あわよくばそのままツーリストインフォメーションのオフィスで印刷させてくれないかと目論み、「Eチケットの印刷に必要(=帰国に必要だからお願いね)」と強調してみたのだけれど、流石にその思いは届かなかった。こういった場合に駄目もとで聞いてみないあたりは、日本人的な感覚なのだろ
 スタッフの人曰く、「この近くにTechnical Libraryがあるから、そこで使わせてもらいなさい」とのこと。Technical Libraryの意味がよくわからなかったけれど、地図に印をつけてもらい、行ってみることに。お礼を言って出ようとすると、「どこから来たの?」と聞かれたので、日本と答えると、日本語で書かれた『ヴィリニュスの魅力』という冊子をくれた。ありがとう。明日もう帰るけど、初心を忘れずに街歩きに励みたいと思います。

 教えられた場所付近に行ってみると「Mint Viretu」という店(?)があり、「Books, Internet, Tea」の文字がある。中に入ってみると、本屋のように本が置いてあり、カフェのようにテーブル席があり、奥にはパソコンとプリンターが置いてある。黒板にはカフェのメニューと共に「Internet 1-15min FREE」の文字も。中に人がいないところをみると、入口の外でタバコを吸っていたイケメンがスタッフのようだ。
 声をかけてネットとプリンターが使えるか聞いてみると「構わぬ。」ということだったので、ありがたく使わせてもらう。おかげで、無事にEチケットを印刷することができた。ここでお礼がてら茶の一杯でも頼むわけでもなく、本当に無料のまま店を出るあたりに、僕という人間の限界を見た気がする。それはさておき、もし読者の皆様が今後の人生において、「ヴィリニュスでプリンターがなくて困る」という状況に陥ることがあったら、ここに行ってみると良いと思う。その際はぜひお茶の一杯でも飲んでいってください。


 気がつけばお昼時になっていたので、ヴィリニュス初日と同じく「Cili Kaimas」へ。
 まだお昼なのでビールではなく、ミント&グレープフルーツ水でスタート。前回のレモン水より果物の風味がして美味しい。日本のラーメン屋でもたまにレモン水を出す店があるけれど、グレープフルーツのほうがうまいと思う。


 前菜はじゃがいもとベーコン。鉄板の組み合わせだ。ベーコンは厚切りにしただけでものすごくうまくなることを思うと、人類で最初にベーコンを薄切りにした人間の犯した罪は、あまりに大きいと言わざるをえない。


 メインはリトアニア風の水餃子「コウドゥーナイ」。ソースはマッシュルーム&オニオンにした。タネはたぶん鶏肉。豚肉かも。味は、まごうこと無き水餃子だ。


 店を出て、教会探訪のフィナーレを飾るべく、聖アンナ教会を目指す。聖アンナ教会は、見事なゴシック様式で知られる教会で、ナポレオンが「フランスに持ち帰りたい」などと意味のわからないことを口走った逸話があるらしい。本当かどうかは知らないが。
 10分ほど歩いて教会に到着すると、なるほど赤レンガが見事な外観。材料はクッパ城とほぼ同じだと思われるが、彼我の差を思うといかにデザインが大切かを実感することができる。




 内装は目下リノベーション中の模様。教会に来るとき毎度のことではあるのだけれど、きちんと礼拝(?)に着ている人がいるなかで写真をパチパチ撮ると何だか後ろめたい気持ちになる。
 ちょうどそんなことを思っているときに、教会の中で携帯電話の着信音が鳴ったので、自分以上に不届きな輩がいるものだとちょっと嬉しくなって犯人を捜すと、教会内の売店(ロウソクなどを売っている)で働いているおばちゃんのケータイだった。なかなか自由な職場であるようだ。

 教会を出て、またあてもなく街を歩く。日本食のレストランが多く、ヴィリニュスで4~5軒は目にしている。全体的にカタカナっぽい謎の文字が看板に使われてるなど、うさん臭い雰囲気が漂っているのだけれど、一軒の日本料理屋の店先で見た貼り紙には、アニメ絵が。日本文化はどこへ向かうのだろうか。


 次は旧市街から川を挟んだ東にあるウジュピス地区へ。ウジュピス地区は、芸術家が多く住むという変な地区で、独自性をこじらせて独立を宣言し、「ウジュピス共和国」という看板まで立てている、なかなかセルフプロデュースの上手な地区である。

 『歩き方』でも「いくつかのギャラリーとカフェがある以外さしたる見どころもないが、(中略)ウジュピスこそヴィリニュスの本当の旧市街の空気が流れている気もする」と褒められているようでもあり、けなされているようでもある評価をされている。
 川を渡りウジュピス地区に入ると、橋を渡ってすぐの場所にあるカフェ「ウジュピオ」に入る。歩き疲れたので、糖分補給のため欧米でおなじみのチェリーパイと、コーヒーを注文。そしてやって来たチェリーパイは、その甘さが脳天に突き刺さる。


 チェリーパイと格闘していると、男女二人組が入店。ベレー帽をかぶった髭の男と、下唇にピアスが刺さった女子の二人だ。カウンターでビールを注文すると、店内はガラガラにもかかわらず、僕の隣にあるテーブルに腰を下ろした。
 僕はなるべくチェリーパイに夢中な風を醸し出そうと努力したのだけれど、奮闘むなしく男のほうが絡んできた。
 開口一番。
 「フリーダム!」
 そちらを見ると、こちらに向けて親指を立てている。そしてもう一度、
 「フリーダム!」
 熱心なglobeファンのかたかと思ったのだが、そうでもないようだ。よく意味がわからなかったので、とりあえず乾杯してその場を収めた。
 これは早く平らげて店をでたほうが良さそうであったけれど、甘みが脳に突き刺さってなかなか進まない。そうこうしているうちに、
 「これ知っているか?」
 と言って、白地に何かの紋章が入った旗を広げて見せてくる。どこから取り出したのだろうか。
 「知らない。」
 と答えると、目をむいて、
 「知らないのか?」
 と聞いてくるので、また
 「知らない。」
 と答える。今度は、
 「中国人か?」
 と聞いてきたので、
 「いや。」
 と答えると、彼女のほうが
 「日本人でしょ?」
 と聞いたのでそうだと答えた。すると男が再び旗を広げて言った。
 「フリーチベット!」
 どうやら僕を中国人だと思ってチベットの開放を訴えたかったらしい。

 その後、聞いてもいないのに色々喋ってきたので、その情報をまとめると、
・名前はヘル(Hel)。Lは2つ(Hell=地獄)ではなく1つだとのこと。「Hel, one L」=「Helonel」(ヘロネル)と言って一人でウケていた。
・昔、兵隊としてイランだかイラクだかにいた。
・今はソルジャーではなくペインター
・2日間だけ東京にいたことがある。何のために行ったのか聞いたら、「寝るため」と言っていた。
・合気道のブラックベルト。セカンド段とのこと。
・7ヶ国語を話せる。ただし英語は苦手。僕が聞いてもひどい英語だった。
・一緒にいる彼女はダンケ。ベルリン出身。
彼の英語があまりにひどいので何を言っているのかよくわからなかったけれど、たぶん日本語で聞いてもよくわからない話だったと思う。
 一通り喋ってビールを飲み干すと、
 「Nice to meet you!」
 と言い残してどっかに去っていった。
 僕はチェリーパイを平らげて、コーヒーを飲み干すと、店を出た。そして、もうウジュピスはいいやと思って来た道を戻った。




 どんな曇の日でも、日が落ちればより暗くなる。雲の上からでも太陽は僕らを照らしていたのだ。というわけで、最後の夜がやって来た。
 旅の最後はやはり、丘の上からの夜景で締めるべきだろうと思われたので、ゲディミナス塔のある丘のふもとへ。だが、坂の下まで行ったところで、丘へ登る道が暗すぎるのでやめた。せめて街頭の一本でもないのだろうか。仕方がないので地上戦で夜の街を写真におさめる。


 そして最後の晩餐へ。どの店にするか迷ったけれど、Cili Kaimasへ。これまでの経験をフルに生かした万全のオーダーを組む。
 まずはビール。この旅行中はじめて日本で見るようなジョッキで出てきた。


 次いでヘリング&赤カブ。甘くて、うまい。


 そしてメインはやはり豚肉。王道のポークソテーで締める。マスタードソースがうまい。

 店を出ると、いつの間にか雪が降り出していた。本当は店に入る前から降っていたけれど、演出上いつの間にか降り出していたことにしたいと思う。

 肩に雪を積もらせながら、僕は宿へと帰り、最後の夜を過ごした。