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2010/09/13

トルコ旅行記(6/6)|イスタンブール。一人旅。

 最後の朝、屋上のテラスで朝食を食べる。

 荷物をまとめてから、一旦ロビーへ降りてパソコンで航空券のオンラインチェックインを済ます。オンラインチェックインの利点は、空港への到着時刻に余裕ができることと、座席を自分で選べることだ。ドバイまでの便、成田までの便それぞれで、窓側の席を選択する。離着陸時に窓から眺める風景には、トイレに行くたびに断わらなければならない不便を忍ぶ価値があると思う。
 部屋から荷物を持って降りて、ホテルをチェックアウト。バックパックはロビーで預かってもらい、最後の街歩き。飛行機は夜のため、夕方くらいまでイスタンブールで過ごすことができる。
 アクビルの残り金額が少なくなっていたので、スルタンアフメット駅の前にある機械でチャージする。10TLもチャージすれば十分だと思ったけれど、手元には20TL札しかない。一か八か20TLを投入したら、案の定、選択の余地なく20TLチャージされてしまった。
 『歩き方』によると、地下鉄のオスマンベイ駅近辺にルイ・ヴィトンがあるらしい。ヴィトンに用はないけれど、きっとこのあたりが日本でいう銀座のような場所に違いないということで、オスマンベイ駅に向かう。スルタンアフメットからトラムと地下鉄を乗り継いで30分ほどだ。
 トルコ銀座に到着。街並みは他のイスタンブールのそれとほとんど変わらない。しかし、店を順番に見ていくと、思い出したように小洒落た店が出現する。
 まずはオシャレな生活雑貨の店「Pasabahce Magazalari」へ。

 オシャレな内装と商品もさることながら、店の地下に洋式のトイレがあることに感動する。もう、トイレにお金を払わなくて良いのだ。トルコに来てからやたらトイレの話ばかり書いている気がするけど、気のせいだろう。母へのお土産にミトンを購入した。
 次いで「City's」というショッピングセンターへ。例によってセキュリティチェックを経て店内へ。近代的な建物に感動して写真を撮っていたら、警備の人ににこやかに注意されてしまった。
 テナントに入っている「LINENS」という店でタオルを見ていたら、50歳くらいのナイスミドルな店員が話し掛けてきた、
 「どっから来たの?」
 「日本から。」
 「おぉ、そうか。○○○(忘れてしまった。恐らくミュージシャン)が日本にツアーに行ったんだよ。」
 「へぇ。それって今年?」
 「いや、もっと前。○○○はもう死んじゃってるからね。」
 そんな昔のこと知るか。
 この店ではIstanbulデザインのタオルを購入する。
 お会計の際にレジで有無を言わさず会員カードを渡されたけれど、ポイントを貯める自信はない。
 その後幾つかの雑貨屋を見てまわったあとで、地下のスーパーへ。トルコ銀座だけあって、「成城石井」的な高級な雰囲気のスーパーだ。頼まれていたアップルティーを購入する。レジのお姉さんにアップルティーを渡すと、
 「○○カードは持ってる?」
 と聞かれたので、一か八かさっき「LINENS」でもらったカードを出してみる。
 「それじゃなくて、このカードよ。持ってないなら作っても良いかしら?」
 「いや、いいです。」
 「Why?」
 「えっ、今日日本に帰るので。」
 「Oh,ツーリストだったのね。中国から?」
 「ジャパンです。」
 「あら、そうなの」
 という感じでお会計。二枚目のポイントカードはなんとか阻止した。今思えば作っても面白かったかもしれない。

 City'sを出て歩いていると、やたらと繁盛しているカフェ「Saray Muhallebicisi」があったので入る。きっとこれがトルコ最後のランチ。やはり締めはケバブ。そしてリッチにデザートとして「フルン・シュトラッチ」というライスプディングも頼む。旅行最終日に感じる富豪気分は、確実に気のせいだけど、気持ちがよい。




 飛行機の時間が迫ってきたので、最後に訪れる場所を決めなければならない。もう一度ブルーモスクに行くことも考えたけれど、この時間は観光客で溢れているのでやめる。これまでの流れを振り返ると、イスタンブールの過去から現在を追っているような気がしたので、最後に立ち寄る場所を「イスタンブール現代美術館」にする。

 館内は撮影禁止。クエスチョンマークとともに展示を見てまわり、ミュージアムショップで文房具を買う。「無印良品」の折り紙なども売っていた。ただし値段は2倍。

 ホテルに戻って、バックパックを背負い空港を目指す。
 スルタンアフメットでトラムを待っている間に、一歩一歩この街から遠ざかる実感で、少しさみしい気持ちになる。


 そしてトルコで乗る最後のトラムがやって来た。
 物凄く混んでいたから一本見送りたかったけど、「最後のトラム」として写真を撮ってしまったので、仕方なくこれに乗る。車窓から街並みを眺めながら、トルコ初日にスルタンアフメットに到着したことを教えてくれたおっちゃんを思い出す。
 おっちゃん、僕も一人でトラムに乗れるようになったよ。

 ゼイティンブルヌでメトロに乗り換えて、空港へ。ショッピングセンターで散々受けたセキュリティチェックをくぐり、エミレーツの窓口で発券手続き。出国ゲートをくぐる。



 この瞬間、すでにトルコを出国しているのだが、なんだか実感がない。飛行機の搭乗までは一時間。「EVERYBODY LOVES DUTY FREE」という妙に生々しいメッセージを横目に、空港内を歩き回る。

 ひとしきり空港内を探索し終わったので、市価の3倍するコーラを飲みながらベンチで休む。ユカは今日もコカコーラ・ゼロを飲んでいるだろうか。
 ふと目の前に人の気配がしたので顔を上げる。
 
 なんと、テギュンがいる。
 まさかの再会。もしやと思いチケットを見せ合うと、テギュンも同じ便でドバイに行くらしい。さらに驚いたことに、僕の座席が16Aで、テギュンの席が16B。まさかの隣どうし。今朝、オンラインで座席を指定していたときから運命付けられていたのか。
 しばし旧交を温め、テギュンは喫煙所へ。搭乗時刻になったので僕は先に飛行機に乗り込む。しばらくしてテギュンが隣にやって来た。サフランボル~アンカラのバス以来となるテギュンの隣の席だ。
 話を聞くと、テギュンはサフランボルにもう一泊し、次に黒海沿いにある何とかという街に行ったあと、今朝バスでイスタンブールに来たらしい。そして中継地のドバイで一泊し、韓国に戻るとのことだ。
 飛行機が動き出す。「Oh!」という声とともに、インベーダーゲームでやられているテギュン。
 飛行機が上空高く飛び上がる。僕がこの度4度目くらいの「Alice in Wonderland」を見ている横で、画面操作のリモコンが戻らなくて困っているテギュン。
映画を見終わり、僕が二度目のJ-POPを聞いていると、深田恭子を見て、
 「この子はいくつだ。」
 「名前はなんだ。」
 「俺は広末涼子が好きだ。」
 と、いらない情報を与えてくるテギュン。かわいい奴め。


 飛行機は4時間ほどでドバイに着き、乗客はArrivalとTransferにわかれる。その分岐点で先に飛行機を降りていたテギュンが待っていた。
 がっちりと握手をし、僕らは別れた。今度こそ、さらばテギュン。

 テギュンと別れ、Transferのゲートを歩いているとき、僕はこの旅が終わったことを知った。
 僕はこの一週間、トルコで一人旅をしていると思っていたけれど、決してそうではなかった。
 最初に行き先を教えてくれたおっちゃんも、降りる場所を教えてくれたドルムシュの運転手も、チャルシュ広場に連れて行ってくれたイケメンも、桃をむいてくれたオヤジも、ユカもテギュンも、皆僕の旅を手伝ってくれた。
 飛行機の中で4度観た「Alice in Wonderland」でアブソレムはアリスにこう言った。
 「涙で成し遂げられた偉業はないぞ。」
 僕は今、旅立つ前の自分にこう言いたい。
 「一人で成し遂げられた旅行はないぞ。」

完。
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